「地域とともに子育てを楽しむ」がキーワード!ファミリー世代に大注目の街 八王子市の子育て事情を解説

「地域とともに子育てを楽しむ」がキーワード!ファミリー世代に大注目の街 八王子市の子育て事情を解説

東京都の多摩地区に位置し、都の中核市に指定されている八王子市。2021年の「東京都民が移住・二拠点居住したいエリアランキング調査」では「八王子・奥多摩エリア」として1位に輝きました。テレワークやリモートワークの普及が進んだコロナ禍において、新宿まで電車で片道1時間以内という都心へのアクセスの良さがありながら、豊かな自然に触れられる街として注目を集めた結果といえるでしょう。

しかし子育て世帯にとっては、立地条件以上に子育てのしやすさも気になるところ。そこで今回は、八王子市の子育て事情について解説していきます。人気の街の子育て事情を調べると、子育てを家庭に任せきりにせず、行政・企業や大学・地域のそれぞれが連携して「ともに楽しむ子育て」を実践する姿が見えてきました。

お手本はフィンランド!? 子育てよろず相談所「八王子版ネウボラ」

八王子市の子育て支援は、生まれてから若者期までを見通し、さまざまな支援を組み合わせた“切れ目のなさ”が特徴的です。その一つの取り組として、市内に3ヶ所ある保健福祉センターを拠点とした子育て家庭への支援「八王子版ネウボラ」を行っています。

まず「ネウボラ」とは、もともとフィンランド語で「アドバイスの場所」という意味の言葉です。それが転じて、産前・産後・子育てのそれぞれの段階で途切れることなく支援を行うための拠点やその制度を指すようになりました。フィンランドで1944年に制度化されたネウボラは、それぞれの保健師が担当の家庭を持ち、的確で連続した支援を行うために、原則として同じ保健師が、産前から定期的に対話を重ねて子どもや家族との信頼関係を築くのが特徴。担当保健師に相談すれば、適切な支援やサービスにつなげてくれるという仕組みで、いわば保健師が子育てよろず相談所の役割を果たすのです。

「地域とともに子育てを楽しむ」がキーワード!ファミリー世代に大注目の街 八王子市の子育て事情を解説

八王子市ではこのネウボラをお手本にして、2016年から保健福祉センターを拠点とした「八王子版ネウボラ」事業を開始しました。居住地によって担当の保健福祉センターが決められており、妊娠届を提出する際に担当の保健福祉センターの保健師などとの面談が必ず行われ、妊娠や子育てに関して不安なことを相談できるほか、市内の医療機関や保育施設と連携して、必要なサービスを一緒に考えてくれます。さらに希望すれば、面談だけでなく保健師や妊産婦・新生児訪問指導員による家庭への訪問指導も受けることもできます。

産後についても、4ヵ月以内を目処に「あかちゃん訪問」として、原則すべての家庭に対して保健師や訪問指導員による家庭訪問が行われます。あかちゃん訪問の際には「八王子版ネウボラ乳幼児手帳」と保存するための「マイファイル」が配布され、小学校入学までの成長の様子、健診時や保育園・幼稚園での相談内容やアドバイスなどが1冊に記録できるようになっています。

加えて、保健福祉センターには栄養士や歯科衛生士、心理相談員など保健師以外の専門職も所属しているので、妊婦さん向けの料理教室や歯磨き指導、沐浴の練習などの講座(一部有償)を受講できます。さらに、困ったことがあれば、面談以外にも電話やメールで相談できます。

「地域とともに子育てを楽しむ」がキーワード!ファミリー世代に大注目の街 八王子市の子育て事情を解説

妊娠・出産・子育てに関する支援制度がある、ということはわかっていても、具体的にどのような制度があるのか、どこに相談すれば利用できるのかがわからない、という場合は多いでしょう。妊娠期からの定期的な面談や訪問を通してそれぞれの家庭の事情を把握している各保健福祉センターに窓口が設置されていると、相談する心理的なハードルも下がり、「とりあえず相談してみよう」と思えます。子育ての力強い味方となってくれそうで安心できますね。

出典:フィンランドの出産・子どもネウボラ(子ども家族のための切れ目ない支援) 髙橋睦子(吉備国際大学)
出典:八王子版ネウボラ/八王子市

放課後の子供の居場所を支援!充実した学童保育所

八王子市には、2022年7月時点で22ヶ所の学童保育所があり、保護者が働いている放課後、土曜、長期休みの期間中、小学1〜3年生までの児童を受け入れています(一部6年生までの受け入れあり)。これまで、共働き世帯が増えたことによるニーズの高まりから、学童保育の待機児童が増加し、その解消が課題となっていました。しかし、予算を増額し指導員を増やしたことなどによりこの問題を解消し、八王子市は2022年の4月時点で「学童保育の待機児童0」を達成。

「地域とともに子育てを楽しむ」がキーワード!ファミリー世代に大注目の街 八王子市の子育て事情を解説

そして、2019年からは一部の学童保育所で夏休み期間の給食の提供をする試みが開始されました。これは全国的にも珍しい取り組みです。保護者のお弁当作りの負担を減らし、暑さでお弁当が傷んでしまう心配もないため、毎年たいへん好評とのこと。通常の給食と同じく栄養士が栄養バランスを考えたますが、普段の給食では食べられないようなメニューを提供するなど、子どもたちが楽しめる工夫も盛りだくさんです。将来的にはすべての学童保育所に広げることを目指しています。実際に、2022年には21ヶ所で提供を行い、開始時の4ヶ所からはおよそ5倍になりました。学童保育所を活用することで、共働き世帯の支援となっているほか、子どもたちの居場所づくりにも一役買っています。

出典:夏休みにも「給食」 八王子の学童保育所で昼食を提供 将来は市内全てで:東京新聞 TOKYO Web

ご飯を食べるだけじゃない!地域のふれあいの場「子ども食堂」

子ども食堂とは、無料または安い値段で子どもが食事をすることができる場所のことで、八王子市内に24ヶ所あります(2021年11月現在)。運営しているのは主に地域の方。子どもだけでも、もちろん親子でも利用可能で、お弁当の配布や料理教室などのイベントを開催している食堂もあります。

「地域とともに子育てを楽しむ」がキーワード!ファミリー世代に大注目の街 八王子市の子育て事情を解説

ただ食事をする場所というだけでなく、調理や配膳の手伝いなどを通して、地域の方との交流も盛んに行われています。行政は、八王子食堂ネットワークの整備や補助金の支給を通して子ども食堂を運営する団体を支援しており、2022年6月には、八王子駅前の商業施設内でも子ども食堂が期間限定出店するなど、地域をあげて盛り上げる企画が展開されています。

出典:子ども食堂/八王子市
出典:「八王子オクトーレ」に子ども食堂/八王子経済新聞

地域の中にも子どもの居場所を放課後子ども教室

「放課後子ども教室」は、放課後や土日、長期休み中に子どもたちの居場所をつくる施策ですが、学童保育とは異なり、教室を開講している小学校に通う児童は登録をすれば全員が参加できます。
「放課後子ども教室」は2007年に開始され、地域のシルバー人材センターの方やボランティアによって、小学校の施設を活用して行われています。

「地域とともに子育てを楽しむ」がキーワード!ファミリー世代に大注目の街 八王子市の子育て事情を解説

運営はPTAや自治会の方などでつくる小学校区ごとの実施団体が行っており、現在は64小学校区で実施しています。校庭でのスポーツや図書室での学習指導をはじめ、囲碁の先生を招いて囲碁教室の開催を行ったり、農業体験を行ったり、地域や学校の特性をいかした多岐にわたる講座内容が魅力です。教室の開催を通して、子どもたちが他学年の児童や地域の方、保護者との交流できることも大きなメリット。保護者も安心して就労できますね。

出典:放課後子ども教室/八王子市

企業や大学も子育てに参加!子育てをともに楽しむ取り組みの数々

八王子市の子育ての支援の特徴は、行政が一方的に支援するだけに留まらず、子どもたちのために地域の企業・大学と市民それぞれが連携して支援を行っている点。それが地域全体として、子どもや子育て世帯を歓迎している雰囲気づくりにつながっています。その代表的な施策が、「夏休み子どもいちょう塾」です。

2022年7月に第12回目が開催された「夏休み子どもいちょう塾」は、八王子市内に在住・または在学している小学4~6年生の児童を対象に、大学・短大・高専の先生たちが夏休みの特別講座を開催してくれるというものです。語学や化学実験、プログラミング、理美容など20以上の幅広い内容の講座から選ぶことができ、高等教育機関での学びを体験できると毎年大好評とのこと。その分野を究めた方が先生として教えてくれるなんて、贅沢な講座ですよね。

「地域とともに子育てを楽しむ」がキーワード!ファミリー世代に大注目の街 八王子市の子育て事情を解説

このような取り組みができるのは、八王子市が20以上もの大学がある全国でも有数の学園都市だからこそ。他にも、各大学は魅力ある学園都市づくりのために学生発表会や就職支援を合同で行うなど、地域と連携して多岐にわたる施策を行っています。

ちなみに、同様に大学などの先生が指導する18歳以上向けの「いちょう塾」も開催されており、学習意欲があれば八王子市民に限らず受講することができます。語学や文学、心理学といった大学の講義のような内容から、お金や健康に関する実用的な内容まで、多種多様な講座が開催されています。無料の公開講座もあり、昼間・夜間や週末の時間帯に開催されていたり、託児サービスが利用できる講座もあったりと、子育て中にも利用しやすくなっているのが嬉しいですね。生涯学習し続けられる環境が整っていることは、他の街にはない強みです。

出典:夏休み子どもいちょう塾/大学コンソーシアム八王子

子どもの意見を街づくりに活かす「子ども☆ミライ会議」

八王子市では「子どもすこやか宣言」を掲げ、何より子どもの権利や可能性を大切にしていくことを表明しています。その一環としてはじまったのが「子ども☆ミライ会議」。子どもの権利を守り、子どもの意見が十分尊重される場として、20年間毎年開催されています。

小学生から高校生までの子どもたちが中心となって八王子の未来をテーマに議論を重ね、まとめた意見を市長・教育長に提案し、さらに意見交換を行います。議論をまとめるサポートの役割も、先生ではなく大学生などの学生リーダーが行うという徹底ぶり。八王子市は、今後「子ども☆ミライ会議」内で子どもたちからされた提案を、実際に施策として実行したり、事業計画に反映させたりしていく方針だそう。

「地域とともに子育てを楽しむ」がキーワード!ファミリー世代に大注目の街 八王子市の子育て事情を解説

そして2021年には、この取り組みに興味を持った団体が「サテライト子ども☆ミライ会議」の子どもたちの意見をもとに、駄菓子屋「Yottette」をオープンしました。運営者と子どもたちが直接意見を交わし、品揃えなどにも子どもならではの視点がいかされているそう。

意見が尊重される場が確保されていることは、子どもの自主性や郷土愛を育み、結果として八王子市の未来を熱い志を持って担っていく人材の育成にもつながるはず。子どもと地域のつながりを重視している八王子市だからこそ、「子ども☆ミライ会議」を20年間継続できているといえそうです。

出典:子どもによる意見発表機会の充実事業/八王子市
出典:2021年度子ども☆ミライ会議報告書/八王子市

どんな子どもも可能性を伸ばせる支援の仕組み

八王子市では、育った家庭に関わらず学習や進学の機会を得られるように、ひとり親世帯や共働き世帯に向けたさまざまな支援を行っています。まず、ひとり親家庭の親に対しては、医療費の助成、減免や各種手当の支給など他の自治体と共通の一般的な支援制度に加えて、就業支援、ホームヘルパーの派遣サービスが提供されています。特に就業支援については手厚く、親子で参加できるセミナーの開催が定期的にされているほか「ひとり親のための八王子市就労生活相談窓口」という専用の窓口で、仕事探しから就職、定着までのサポートが受けられます。

「地域とともに子育てを楽しむ」がキーワード!ファミリー世代に大注目の街 八王子市の子育て事情を解説

そして八王子市の支援の特徴は、このような親に対する支援だけでなく、その子どもに対する支援があり、両面からのサポート体制が整っているところ。そして、それがほかの子どもたちにとってもメリットとなるような支援が展開されているというところです。

子どもに対する支援として注目したいのは、中学生を対象とした「ゆめはち先生」。対象になるには所得などの制限がいくつかありますが、無料で家庭教師を利用できます。大学生などの学習支援員が自宅に来て個別に指導してくれ、勉強のサポートのみならず進路の相談にものってくれます。オンラインでの指導にも対応してくれるのも嬉しいポイントです。(オンライン指導に関わる費用は自己負担)

中学生になると高校受験を見据えて学習塾などに通う必要性を感じるものの、費用や送迎の負担といった家庭の事情、集団生活が苦手という子ども本人の事情から断念する場合も多いという実情をふまえ、子どもが学習の機会を失わないために作られました。ほかに、「はち☆スタ」という集団での学習支援も行なっています。

出典:ひとり親家庭のサポート/八王子市
出典:ゆめはち先生/八王子市

自然が豊かなだけじゃない!体験型教室も充実

2007年にミシュランガイドで自然が豊かな場所として最高ランクの星3つを獲得した高尾山。海抜599メートルの自然林が広く残っている山で、富士山、兼六園、熊野古道、屋久島などの名所と並んで星3つを獲得しました。ケーブルカーやリフトで中腹まで登ることができる上、軽装で登ることができるコースもあるので、子ども連れも含め幅広い年齢の人が楽しむことができます。春にはお花見、夏にはライトアップイベントと、子どもと一緒に四季折々の美しい自然を堪能できるスポットです。 また、高尾ビジターセンターでは、ワークショップや自然教室が開催されているほか、高尾山に生息している動植物について学ぶこともできます。

「地域とともに子育てを楽しむ」がキーワード!ファミリー世代に大注目の街 八王子市の子育て事情を解説
高尾山ケーブルカー 清滝駅

八王子市には、市内中央部を流れる浅川をはじめ、子どもも楽しめる水辺のスポットが数多くあります。多賀公園や鶴巻橋河川敷エリアは広場も整備されており、休日には家族連れで賑わうエリア。毎年7月には「八王子浅川ガサガサ探検隊」という川遊びを楽しむイベントが開催されるほか、水辺の生物を観察や清掃活動など川に触れる機会がたくさんあります。 

「地域とともに子育てを楽しむ」がキーワード!ファミリー世代に大注目の街 八王子市の子育て事情を解説
浅川の河川敷

市の東部(由木地域)、別所地区に位置する長池公園は、雄大な景観が楽しめる公園です。芝生が整備されている広場もありますが、2つの溜池と広大な雑木林、田んぼといった里山の環境が残されています。約800種もの植物が生育しており、都の絶滅種に分類される「ジュンサイ」「ミズユキノシタ」など希少な動植物も多く見られます。この公園でも「カイコ・シルク体験」などの子どもが楽しめるイベントが開催されています。

「地域とともに子育てを楽しむ」がキーワード!ファミリー世代に大注目の街 八王子市の子育て事情を解説
長池公園にある長池見附橋(旧四谷見付橋)

都心の便利さも魅力的ですが、やはり子どもには自然に触れてのびのびと育ってほしいもの。八王子市周辺は、古くから風光明媚な土地として知られていました。西行法師は「浅川を渡れば 富士の雪白く 桑の都に青嵐吹く(桑の都=八王子市周辺)」という短歌を詠んだといわれています。市内を流れる浅川のせせらぎと、山の青々とした木々の様子が目に浮かぶようですね。 

出典:高尾ビジターセンター
出典:八王子浅川水辺の楽校/八王子市
出典:広報はちおうじ(8/15号)/八王子市
出典:広報はちおうじ(8/1号)/八王子市
出典:長池公園/八王子市

地域の人々が子どものために行動する街 八王子

「地域とともに子育てを楽しむ」がキーワード!ファミリー世代に大注目の街 八王子市の子育て事情を解説

都心からのアクセスも良く、豊かな自然に恵まれた街八王子市。しかしそのような立地条件以上に、地域の特色をいかし、行政、企業・大学、地域が連携して「子育てしやすいまちナンバーワン」を目指すあたたかさが印象的な街ですね。
それぞれの家庭や子どもに合った支援や教育を受けたい世帯にとっては、子育てしやすい街といえるのではないでしょうか。

八王子市で注文住宅を建てるなら マイホームパートナー

多摩産材の家

マイホームパートナーでは毎週、八王子市周辺で注文住宅をご検討の方へ向け『まいにち相談室』を開設しております。
平日の10:00〜16:00(水曜日を除く)にて、新築、建て替えに関する様々なご相談をして頂けます。

ウッドショックで計画が進んでいない方、お困りの方など、健康的な素材とは何か? 木材の適材適所の活かし方は? 技術、機能的な 住宅とは? ワークスペースのリフォーム、水廻りのリフォーム、etc・・・

もちろん新築のご計画の方、資金計画のご心配な方も、住まいのお困り事なら何でも対応させていただきます。お気軽にお立ち寄り下さい。