「家族の健康を壁からつくりたい」。高千穂シラス株式会社の「シラス壁」の開発にこめられた想いとは
家を建てるとき、一番大切なのは「家族がずっと快適に暮らせること」ですよね。そのために、立地やデザイン、間取り、価格など、いろいろな要素を検討していくと思います。
そんな家族を大切にする方々から、今注目を集めている壁材をご存知でしょうか? その名も「シラス壁」。宮崎県の大地の恵み「シラス」を贅沢に使用し、100%自然素材であることにこだわってつくられているのにも関わらず、吸湿性や消臭性、お手入れの手軽さなど、ファミリー世帯に嬉しい数々の機能が備わっています。
このシラス壁はどのようにして生まれたのか、また実際に自宅に採用した方のお声はどんなものなのかを、シラス壁を開発した高千穂シラス株式会社(以降 高千穂シラス)の佐藤様に伺いました。
工務店ながら壁材を開発した「高千穂シラス」
― 本日は貴重なお時間をいただきありがとうございます。まず初めに「シラス壁」とはどういったものなのでしょうか?
佐藤様:「シラス壁」は、宮崎県や鹿児島県など九州の南部を中心にあちこちに分布している「シラス」という火山噴出物を主成分とした、自然素材100%の左官材です。弊社では内装仕上げ材の「薩摩中霧島壁」や、外装仕上げ材 の「スーパー白洲そとん壁W」といった様々なラインナップをご用意しておりまして、個人宅や店舗様など様々な物件で採用していただいております。
「シラス」は、日本の九州南部に分布する細かいの軽石や火山灰を含んだ土のことなのですが、マグマが岩石となる前に粉末となった物質で、非常に細かい微粒子の中に無数の穴が開いた複雑な構造を持っています。水捌けが悪く稲作には向かない土ではありますが、一方でシラスの主成分の珪酸は除湿剤の主原料にもなっているものですので、優れた調湿効果が期待できます。
また、シラスに含まれるアルミナは水分やガスの吸着性能が高く、シラス粒子中の空洞に臭いや化学物質の分子を吸着しますので、例えば洗濯物を部屋干しした際の嫌な匂いなども残りづらいという性質があります。
―高千穂シラス様は、はじめは一級建築士事務所として起業されたんですよね。工務店にも関わらず、なぜ壁材を開発しようとされたのですか?
佐藤様:はじめは神奈川県で一級建築士事務所として起業しました。「シラス壁」の開発をはじめたのは1995年頃だったのですが、当時は「シックハウス症候群」が社会問題となっていました。住宅業界では省エネルギーの観点から、断熱性や気密性をいかに高めるか、ということが重要視されてきたのですが、機密性が高くなることによって住宅に使われる接着剤や薬材を人が吸い込んでしまい、アレルギー症状などの健康への影響が不安視されていたんです。その解決策として、自然素材に注目が集まっていました。
そのうちの一つとして、珪藻土が使われるようになっていたんですが、あるメーカーさんから頼まれて実際に使ってみると、 消臭機能があるよと言われていた割には、そんなに高い機能があるようには感じなかったんですね。それで、ちょっと調べさせてくださいということで、壁を削って持ち帰って、電子顕微鏡で見てみたんです。そうすると、珪藻土にあいているはずの無数の穴が、何かによってふさがれてしまっていることに気づきました。珪藻土自体は確かに自然素材なんですけれど、壁材にする上でその他のいろいろなものが混ぜ合わされて、その結果、自然素材本来の良さが殺されてしまっていたんです。
それならば、もう自分たちで作ってしまおう。自分たちで作るなら100%自然素材にこだわろうということで、新しい壁材を開発することになりました。そこで目をつけたのが「シラス」で、1999年に生まれたのが100%自然素材の内装材「薩摩中霧島壁」だったんです。
自然素材にこだわりぬいた「シラス壁」開発秘話
―100%自然素材にこだわったということですが、やはり開発には相当な苦労があったと思います。
佐藤様:そうですね。シラスを使おうということが決まってからも、そこに化学物質などの人工的なものを混ぜてしまっては意味がないので、自然素材のみで作ることにとことんこだわりました。約5年という歳月をかけ、シラス壁の開発に至りました。
―開発をされる中で、「シラス」を壁材に採用しようと思い立ったきっかけは何だったのでしょうか?
佐藤様:宮崎県都城市で生まれ育った弊社の代表・新留の実体験がきっかけです。宮崎県ではあちこちで鶏や豚が飼育されていまして、養豚場とか養鶏場に近づくと動物やその糞尿のにおいがしてくるのが普通だと思います。通常は匂いを抑えるために砂が撒かれたりするんですが、南九州地方では砂の代わりにこの火山噴出物、シラスが使われていたということもありまして、鼻を突くような刺激臭はほとんどしなかったんです。
また、この地域には戦時中にたくさんの防空壕が掘られていて、もちろんシラスの山にも掘られていたんです。新留は今年で77歳になるんですけれど、幼少期の頃そこでかくれんぼをしたりして遊んでいたようなんです。普通、洞窟の中に入ると湿気がこもってじめじめしていると思うのですが、なぜかそのシラスの山に掘られた防空壕に入ると清涼感があって、気持ちがいいと。そういった体験もしておりまして、シラスには調湿の作用がある のだろうなと肌で知っていたんですね。
―シラス壁は実際の体験から生まれたものだったのですね。今使われているシラスは宮崎県のものなんでしょうか?
佐藤様:はい、そうです。工場も宮崎県にあります。発売当初はそんなに一気に売れるわけでもなく、少しずつ、少しずつ使われるようになったんですけども、そのうち受注量も増えてきて大きい工場が必要になってきたんです。工場用地を大きくしすぎてしまうと農村の美しい景観を損ねてしまうことにも繋がりかねないので、そこは最大限配慮をしました。
また、地元の農家の方にも製造のお手伝いをお願いしています。普段はお米を作ったりトマトを作ったり、サツマイモを作られている農家さんなんですけれど、丸一日ずっと畑作業をしているわけではないので、その空いている時間にお手伝いをしていただいています。農家の皆さんも、若者が出て行ってしまうという背景もあって、農業を維持していくのがなかなか難しいんですね。この副収入を得ることによって、農業をやめずに継続できるというところにも繋がりますので、後付けにはなりますけれど、地域貢献にもつながっているかと思います。
春夏秋冬からっと快適!抜群の除湿性能で部屋干しもOK
―シラス壁を住宅の内装に使うメリットについて詳しく教えてください。
佐藤様:まず、シラス壁にはとても優れた除湿機能があります。シラスは湿度が上がると余分な湿気を吸収し、湿度が下がると湿気を放出する性質を持っています。これを内装材に採用すれば、シラスが室内の湿度を調整してくれますので、じめじめした日本の夏でも快適に過ごすことができますし、冬でも結露などが起こりづらくなります。体感温度は湿度に左右されるといわれていますから、適度な湿度を保つことでエアコンを使わずとも快適に過ごすことができ、光熱費の節約にもつながります。
共働きの方だと特に、なかなか平日の日中に外で洗濯干すっていうのかできなくて、部屋干し がメインになってしまうと思うんです。そんなときに、部屋干しがなかなか洗濯物が乾かないと思うんですけど、シラス壁を採用していただいたお部屋だと、結構乾くんです。
―シラス壁は、においにも効果を発揮するんですね。
佐藤様:はい。シラスには、匂いの原因となる空気中の化学物質を吸着する機能がありますので、ペットやタバコの気になるにおいを吸着し、分解することができます。壁の中に匂いを吸着して、それをずっと持ち続けるわけではないので、飽和状態になって機能がだんだん失われるということもなく、半永久的に持続するというものメリットですね。
実は、私個人の自宅にもシラス壁を採用しているんですが、本当に匂いが気になりません。住宅見学会などを開催した際にも、ご来場いただいたお客様から、「いわゆる“家のにおい”がしなくてびっくりした!」という声を多くいただきます。何年も住まわれているお宅でも、他人の家独特のにおいがしないんです。
ファミリー世帯のお客様からは、シラス壁を内装に使用している部屋で部屋干しをすると「洗濯物が早く乾く」「特別な洗剤を使わなくても部屋干しの嫌なにおいがしない」というお声をいただいています。現代のファミリー世帯の方は共働きの方も多いと思うので、シラス壁がその助けになっていると思うと嬉しいですね。シラス壁の吸湿力や消臭力が存分に発揮されている例といえます。ランドリースペースや部屋干しをする部屋だけをシラス壁にするというのもおすすめです。
空気中の化学物質やウイルスにも効果あり!
―シラス壁は他の化学物質を使われていない、100%自然素材の壁材ということですが、空気中の化学物質にも効果を発揮するのでしょうか?
佐藤様:はい。シラス壁には、シックハウス症候群の原因にもなる、ホルムアルデヒドといった化学物質を吸着・分解する性能があります。他の家具や建材から放出されるVOC物質もしっかりと吸着し、再放出することもありませんので、機密性の高い住宅でも健康被害へのリスクを大きく減らすことが期待できます。アトピーや過敏症にお悩みの方でも安心してお過ごしいただけると思います。
またシラス壁は他の内装材とは異なり、内装仕上げ用建材のホルムアルデヒド発散量を評価する等級「F☆☆☆☆(フォースター)」の告示を行わなくてもよい商品となっています。高千穂シラスのシラス壁は、ホルムアルデヒドやその他の化学物質を全く使用していないので、発散量を評価する必要がないんですね。他の内装材と比べて、それほどの安全性のレベルに違いがあると言えるのではないでしょうか。
ホルムアルデヒドとは、シックハウス症候群を引き起こすとされる代表的な化学物質の一つです。この物質はヒトの粘膜を刺激するため、目がチカチカする、鼻水が出る、のどの痛みや咳などの症状を引き起こします。現在では使用量が規制されてはいますが、樹脂や接着剤などに広く含まれているため、さまざまな建材に使用されています。
出典:ホルムアルデヒドとはどんな物質ですか/東京都福祉保健局
―シラス壁は、コロナウイルスにも効果を発揮すると聞きましたが本当ですか?
佐藤様:そうですね。シラス壁には、付着したウイルスのほとんどを不活化する性能があります。都城工業高等専門学校野口太郎准教授、野口大輔教授にご協力いただいたコロナウイルス不活化試験にて、その効果は確認済みです。弊社の主力商品である「薩摩中霧島壁」と「白洲漆喰」による実験では、いずれの壁材についても接触わずか1分でウイルス量を99%以上減少させることができました。
その他にも、インフルエンザウィルスや、水虫菌にも効果がありまして、そういった効果についても、しっかりと研究機関と協力しながら、エビデンスを取って出しております。水虫に効果があるっていうこともわかりましたので、今後は、シラスを用いたバスマットなども開発を検討しています。スポーツジムだったりゴルフだったり、そういうところから水虫を持ってきて、家族に移してしまうことってあると思うんです。家庭内に水虫を蔓延させないっていうところにも繋がるので、そういったシーンでもシラスが活躍できるのではないかなと考えております。
シラス壁のうち「薩摩中霧島壁」と「白洲漆喰」の試験片にネココロナウイルス(新型コロナウイルスと同じコロナウイルス科に分類され、構造的特徴も類似しているウイルス)を滴下後、表面を洗い流した液 (=試験液)に含まれるウイルス量を測定する実験を行いました。すると、およそ10分経過後には付着したウイルスのほとんどを不活化できるという結果となりました。コロナウイルスだけでなく、細菌に関しても同様の結果が報告されました。
詳細はこちら
高機能なのに、メンテナンスはお手軽
―シラス壁がとても高機能だということはわかりましたが、メンテナンスについてはどうでしょうか?自然素材を使用した建材はメンテナンスが大変だという印象があるのですが…。
佐藤様:実はメンテナンスもとても手軽なんです。先ほどご説明した通り、吸湿性や消臭性はシラス壁そのものの性質であるため、メンテナンス不要で半永久的に続きます。
日常的なお手入れは、内装の場合、小さい子どもがいるとついてしまいがちな手垢汚れや細かい傷は、消しゴムやメラミン性のスポンジで、水なしで落とすことができます。オレンジジュースやコーヒーといった飲み物などをこぼしてしまった際は多少シミは残ってしまうんですが、カーペットのお手入れと同じように霧吹きで水をかけて、固く絞ったタオルとかで、とんとんとんと染み抜きする要領でお掃除をしていただければ、だんだん染みもなくなってきます。
―しばらく経ってから外壁を塗装する必要はないのでしょうか?
佐藤様:外装の場合は、紫外線などで焼けたりすることがほとんどないので、塗装をし直したりする必要はありません。持ち家のデメリットの一つがメンテナンスの手間やコストですが、シラス壁の外装ならコストを抑えることが可能だと思います。ただ、雨水によって埃がたまってしまうと黒く汚れてしまうので、2〜3年に一度ホースや高圧洗浄機などを使って汚れを落としてもらえればと思います。
長い目で見れば、コストパフォーマンスも優秀
―さまざまな機能を持つシラス壁ですが、高機能ゆえに工期やお値段が大変気になるのですが。
佐藤様:工期については、ほかの建材を使用した場合と変わらず、シラス壁を採用したからといって長くかかることはありません。施工費用については、コストを重視したビニールクロスなどの場合と比較すると、2〜4倍がかかる場合が多いです。
―やはり高機能な分、少しコストはかかるのですね。
佐藤様:しかし、一般的な建材の場合、内装であれば張り替えが、外装であれば塗り直しが数年後から定期的に必要になりますが、シラス壁の場合は前述の通り自宅でできる簡単なお手入れのみで、塗り替えなどは必要ありません。したがって、初期費用はかかるものの、ランニングコストは抑えることができるんです。
―それは素晴らしいですね!では最後に、佐藤様から家を建てようと思っている皆様へメッセージをお願い致します。
佐藤様:私も家作りを経験した身として伝えたいのは、初期費用が安く抑えられても、結局後になってお金が掛かってきてしまうこともあるということです。住宅は人生の中でとても大きな買い物ですので、資金繰りや、いかにコストを抑えるかということももちろん大切なんですけど、同時に長く付き合うものでもあります。例えば家を建ててから十年先に、お子さんの教育にお金がかかるタイミングで住宅のメンテナンス費用がかかってしまうと、家計が苦しくなってしまう。
そのあたりの、家族の成長も考えたライフプランというか、家のメンテナンスも含めてトータル的に考えて、今選ぶ素材っていうところに少しでも目を向けていただいて、より良いもの、自分の納得できるものを選んで、家作りをしていただきたいなと思います。
高千穂シラス株式会社
ライフニックス事業部
佐藤 憲弥 様
2009年に高千穂シラスへ中途入社し、ライフニックス事業部でシラス壁の販売営業を日本全国の工務店、設計事務所、左官店を訪問。本物の自然素材100%の良さを1人でも多くの方にお届けしてシラス壁を通じて未来の子どもたちに地球を残すために日々活動中。前職が住宅営業だった経験を活かし、これからの家造りをする方に少しでも後悔のない家造りができるようお役に立てればと思います。
住宅は買って終わりではない!納得できる買い物を
さまざまな苦労を重ね、自然素材にこだわって開発されたシラス壁。開発秘話を聞くと「家族の健康のため」にたくさんのこだわりを持って開発されたことがわかりました。安価な素材を選択すれば一時的にコストを抑えることは可能ですが、後々の塗り替えといったメンテナンス費用を考えると決してお得と言い切れない側面もあります。また、壁材にこだわることは、シックハウス症候群を引き起こす可能性のある化学物質や、匂いによる日々のストレスなどから、家族の健康を守ることに繋がります。家族の成長を見守る家に、シラス壁を検討されてみてはいかがでしょうか。
出典:高千穂シラス株式会社
出典:シックハウス症候群の予防と対策/厚生労働省
こだわりの注文住宅を建てるなら マイホームパートナー
マイホームパートナーでは毎週、『まいにち相談室』を受付中です。
平日の10:00〜16:00(水曜日を除く)にて、新築、建て替えに関する様々なご相談をして頂けます。
ウッドショックで計画が進んでいない方、お困りの方など、健康的な素材とは何か? 木材の適材適所の活かし方は? 技術、機能的な 住宅とは? ワークスペースのリフォーム、水廻りのリフォーム、etc・・・
もちろん新築のご計画の方、資金計画のご心配な方も、住まいのお困り事なら何でも対応させていただきます。お気軽にお立ち寄り下さい。